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広島発善意のアート結実 大地震から4年のトルコ '03/7/10


 ■NPOが巡回展で激励 美術館を建設
  四年前、大地震に見舞われたトルコで日本の現代アートの巡回展を続けてきた特定非営利活動法人(NPO法人)の活動が、現地で作品を恒久展示する美術館の完成となって結実する。広島市に本部を置く「国際協力アカデミーひろしま(AICAT)」。被災者の心を癒やそうとの呼び掛けに賛同した日本の作家たちの作品約六十点を収蔵する美術館は二十五日、トルコのデイルメンデレ市にオープンする。

  トルコでは一九九九年、死者一万八千人を超す大地震が発生。災害支援を活動目的とするAICATは、芸術作品を通して被災者に希望のメッセージを送ろうと、二〇〇〇年春からプロジェクト「こころのパン」をスタートさせた。本部がある広島市にとどまらず全国に協力を呼び掛けた。


  協力要請に、福田美蘭氏や舟越桂氏、母袋俊也氏ら、日本の現代美術界の第一線で活躍している作家約五十人が、作品を無償で提供した。

 「必ず夜明けは来る」「苦しい今日を乗り越える希望となりますよう」―。作家のメッセージも添えた作品は、昨年九月からイスタンブールなど五カ所を巡回。その都度、AICATのメンバーが現地を訪れ、巡回展の準備など「裏方役」を務めてきた。


  レベルの高い作品と、こうしたAICATの活動に感銘した人口三万人のデイルメンデレ市が、作品を恒久展示する市立現代美術館の建設を決めた。イスタンブールの南東約百キロに位置し、日本とトルコの新たな「親善の懸け橋」となる美術館は二十五日、オープンの運びとなった。

  オープニングに合わせて、AICATのメンバー十人と作家七人ら計二十八人が、現地を訪問する。現代アートのワークショップ、被災者の心の復興に果たす美術の役割などを語るシンポジウム、押し花の実演などで、トルコの人たちと交流を深める。

 AICATの上田みどり代表理事は「心のケアには時間がかかる。お互いの理解に結びつく、息の長い文化交流を続けられたら」と話している。

【写真説明】トルコ・デイルメンデレ市での美術館開館イベントの打ち合わせをするAICATのメンバーたち(広島市中区)